五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)

□05-ハンバーガーとJK
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 近くのハンバーガー屋さんにアミとちびっ子のごじょーさとるは移動した。

 アミはお姉さんなので、ごじょーさとるの食べる分もおごってあげる。――てか、ジジイの金だからアミのお金じゃないしね。

 ご飯を買って席に向かい合って座ると、ごじょーさとるが呆れ顔になった。

「ハンバーガーって言ってたくせに、ナゲットかよ」
「そうだよ、アミ好きなの」

 というか、これ以外を食べると胃もたれが半端なくて辛くなるから、基本食べれない。

「ごじょーさとるこそ頼み過ぎじゃない? 全部食べれるの?」

 ごじょーさとるの前で、ハンバーガーやポテトが小さな山を作ってた。
 当たり前じゃん、って言いながらごじょーさとるはハンバーガーの包み紙をむき始める。

 アミの胸くらいまでの身長しかないし、手足はヒョロヒョロして本当に子どもって感じなのに……小さな体のどこにこの食べ物が入るんだろう? 育ちざかりはすごいなぁ……――アミはしみじみ感動する。

「そーいえば、ごじょーさとるっていくつなの?」
「9歳」
「え、ガキじゃん! ごじょーさとる!」

 思ったよりも年下だったことにビックリする。

「うるせー。“アミ”こそどうなんだよ?」
「あ! 今、アミって言った!!」

 聞き逃さなかったアミはごじょーさとるを指さした。ムスッとした顔が返ってくる。

「なに、文句あんの?」
「ううん。別にアミはアミだから大丈夫だよ」

 アミは今の施設の子供の中で最年長だけど、他の子からも呼び捨てされる事があるから気にしない。
 逆に心の距離が縮まったようでアミは嬉しくなった。――まあ、仲良くなる必要もないんだけど。

「えっとね、アミは15才だよ。高校1年生!」
「まあまあ、ババアじあねーか」

 鼻で笑う様に言ったごじょーさとるに、アミはカチンと来たけど、9歳児相手に本気になって怒るのも馬鹿らしいから無視する。うんうん、アミってば大人!

「……俺の事もサトルって呼べよ」
「名前サトルなの?」 
「そう」

 “ごじょー”が苗字で、“さとる”が名前なのね。

「うーん、でもアミ、ごじょーさとるの方が呼びやすいからごじょーさとるって呼ぶね」
「そっちのが長いし、呼びにくいだろうが」
「アミの中でサトル枠って、もうサトル君で埋まってるからさ。ごめんね」
「だれだよサトル君って」
「サトル君はサトル君だよ」
「意味わかんねー…」

 覚えてないけど、サトル君はアミと一緒にヒーローとして選ばれし子どもをしてたらしい。そんでもってアミに大切な事を教えてくれた男の子だ。

 けど、わざわざ、ごじょーさとるに教える必要もないからね。アミは話を区切って、ナゲットにかじりついた。

「アミと話してると、頭痛いな」

 ごじょーさとるが疲れた顔をしたあと、ハンバーガーを口いっぱいに頬張ってモシャモシャする。

 アミだってごじょーさとるのせいで疲れてるし、頭痛いんだけどね……

――え、あれ?

 と、ここでアミは本当に頭が何となく痛い事に気づいた。過去に覚えのある危険な痛みに嫌な予感がする。

――ハッ、うそっ、待って、もしかして薬の時間なの!?
  
 アミは1日に1回薬を飲まないと、とてつもなくヤバくなる。
 
――前に薬を飲んだのが、いつもどおり朝の7時で、真夜中前に過去送りになって、こっちに来たの朝のが5時すぎくらい。…で、今の時間が12時半すぎだから……

 えっ! だいたい24時間たっちゃうじゃん!!――慌ててウサタンポシェットから普通の薬が入ったピルケースを取り出す。
4か所入れる所があって、1回分ずつに分けてある。1か所のフタをあけて逆さまにして薬を取り出した。

 不思議そうな顔をするごじょーさとるの前で、急いでパキパキとプラスチックと銀紙の包みから薬の中身を出していく。
 7種類の錠剤を出し切って、勢いよく口に入れる。

 ナゲットと一緒に注文してた水で無理やり薬を流し込むと、やっとホッとできた。――ヤバかった! あんまり症状が悪化する前に気づけてよかったぁ!!

「なんだよ、その薬」

 アミの動きを見ていたごじょーさとるがポカンとした顔で聞いて来た。

「アミの生命線だよ。無いとヤバいの」
「病気なの?」
「病気っていうか生まれつきの体質みたいな感じ」

 アミはこんなに可愛くて元気そうな見かけをしてるけど、生まれついての超虚弱体質で、走るとヤバいし、体の中があちこちボロボロだったりする。

 薬さえ飲めば一応問題ないから、薬の時間はいつも絶対に守るようにしてたんだけど、今回は過去送りになったせいで時間がずれて危なかった。

――でもこれって過去でも普通にアミの時間が経過してるってことじゃん…

 そういえば、過去送りでこっち着た時、すごく眠かったのを思い出す。
 あの時は深く気にしてなかったけど、アミの体の時間は過去でも同じように流れるから、時差が出来てたって事だよね。

――そんな大切な説明受けてないんだけど! マジムカつく!!
 
 アミにとってはとてもデリケートで重要な死活問題だったから、クソジジイたちにイライラしちゃう。もしも薬の時間に気づかなかったら大変な事になってたんだけど!!

「どうしたんだよ、ぶすくれて」

 アミが怒ってるのに気が付いたごじょーさとるが、ハンバーガーを口にいれながら声をかけてくる。

「ううん。ちょっとイライラしちゃって」
「なんだ、生理?」
「ちょっとデリカシーなさすぎ」 

 ごじょーさとるの失礼な言葉に、さすがのアミも大人には成ってあげられなかった。


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